電話リレーサービスが公共インフラになるまで

01:電話リレーサービス開始前の日本の状況

対象: すべての人
掲載日 : 2024年01月09日

目次

    日本の2000年代までの経緯

    日本に電話が登場して約130年経ち、今や24時間365日当たり前に使うことができます。通信手段として電話は世界的に最も普及しており、2018年時点で日本では2億4,000万ユーザ、全世界では79億ユーザにのぼる人が利用しています(携帯電話、固定電話を対象とするため重複あり)。
    電話は、相手の番号さえわかれば、どこにいても誰とでも自由に話すことができ、電話の登場により人々の生活や働き方は大きく変わっていきました。一方できこえない人たちの電話を使いたい」といった思いが様々なツールを生み出してきました。1980年代には手書き電話、ミニファックスが登場します。

    その後ファックスはきこえる人たちの家庭にも普及していき、現在ではユニバーサルな通信手段となっています。またICTの発展によりEメールが登場し、スマートフォンの普及やテレビ電話機能付きの電話機も使えるようになりました。ファックスやEメールは、きこえない人たちにとってもコミュニケーション手段として必要不可欠なものですが、これらは電話と比べるとリアルタイムかつ双方向のコミュニケーションはできず、テレビ電話の場合は、利用できる人が限定的です。

    2000年代以降もこの状況は大きく変わらず、電話であれば数分で済むような予約であっても、きこえない人はお店や役所等に出向いて対面で予約をし、そのために仕事を休むということも少なくありませんでした。また急ぎの用事がありEメールで問い合わせをしても、相手からの返信が来るまで待つしかないという状況に置かれたり、インターネット環境に不慣れな方はいまだにFAXでやりとりしています。このように「電話の世界」から取り残された状態であったわけですが、きこえない人を取り巻く状況を変える要望が高まることはなく、事態はあまり進行していませんでした。

    欧米中心とした諸外国の経緯

    一方、欧米ではあらゆる分野できこえない人の社会参加が進んでおり、日本よりはるかに早く電話リレーサービス等を活用しながら、きこえる人と同等に自らの能力を発揮して、社会の第一線で活躍することができる環境が整っていました。世界で初めて電話リレーサービスが開始されたのは1964年です。日本で電話リレーサービスが始まる60年も前のことです。当時米国の3人のきこえない人たちが、電話と同じようにリアルタイムで「文字」による会話を可能とする通信機器「TDD(Telecommunication Device for the Deaf)」を発明しました。
    1990年には米国でADA法(障害を持つアメリカ人法)脚注1が成立し、電話リレーサービスの実施が公的に義務付けられ、サービス利用料も無料で24時間365日電話ができる環境が実現されたのです。米国のみならず、スウェーデン、オーストラリアなど多くの国において、公的制度のもとで電話リレーサービスが提供されるようになり、2010年以降はタイやコロンビアでも法制化されるなど、世界各国で急速に進展していきました脚注2

    日本はなぜ出遅れたのか?

    2018年当時、G7のうち唯一の未実施国として日本は出遅れていましたが、日本における電話リレーサービスの導入がなかなか進まない理由として、法制度の課題があったこと、そして電話へのアクセスがそもそも通信の問題なのか福祉の問題なのかはっきりしていなかったこともありました。

    関連制度の見直し・改正を求めていくとともに、電話リレーサービスの必要性も訴えていかねばなならないところ、この問題を「誰に」話すのか、それもまたひとつの壁でした。きこえない人への支援や手話通訳は福祉の問題として、厚生労働省が担当すべきとの意見(聴覚障害、手話=福祉)、電話は電気通信事業であるため総務省の担当が適切との意見」があり(電話=通信)、前に進まない時期が長くありました。これらの課題を誰がどのようにして取り組み、解決していったのでしょうか。次回のコラムでは日本における電話リレーサービスの始まりについてお届けします。

    (業務企画調整チーム 親松紗知)


    脚注1「1990年障害のあるアメリカ人法(2008年改正)」(平成23年度 障害者差別禁止制度に関する国際調査 第1章、内閣府ウェブサイト)
    脚注2「海外における電話リレーサービスの現状」井上正之/石井靖乃(デジタル活用共生社会実現会議 ICTアクセシビリティ確保部会 電話リレーサービスに係るワーキンググループ(第3回)資料3-1、総務省ウェブサイト)


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